3D兄弟舎オーナーのわたしだけが知っている?
ビデオゲーム同人サークル『3D兄弟舎』オーナーの独白録。 主にゲーム(大体10年以上前の)に関する話題を取り上げるが、気分によってはその他いろいろな事も書くかも。
セーラームーン裏同人誌
 なんか漫画やアニメのコンテンツホルダー側から『二次創作』を積極的に認めようじゃないかと言う動きがあるんだそうで・・・
 まぁ、ここで言う『二次創作』というのは、自分なんかが『アニパロ』とか言っていた、アニメ等の登場人物を使ってオリジナルとは別の話を勝手に作る(表現の仕方が悪いなぁ)というものですが、最近はあまりアニパロって言わないらしいですね。『アニパロコミックス』とかに親しんでいた(笑)自分にとっては二次創作という言葉は違和感があるのですが・・・ というか、なんか二次創作という言葉自体に『精神的アリバイ工作』を感じてしまってもの凄く嫌なんですけど。

 ただ、二次創作云々の記事の多くで、『エロパロ』まぁ、あれですね、『えっちな二次創作』を(意図的にか?)スルーしているのはどうかと。
 ぼく自身の割と長いおたく歴(苦笑)と、某おたく系ショップで主任(よく分からないが名刺にはそう書いてあったので多分主任だったのだろう)をしていた時期の経験からすると、二次創作の需要の大部分、ぶっちゃけ8〜9割はエロパロだった訳で。自分は一昔前の実体験からモノを言っているのですが、多分、今も(状況を見る限りでは)大して変わらないでしょう。
 コンテンツホルダー側としても『少数派』の『普通』の『二次創作』を積極的に認める事で、『多数派』の『エロパロ』をパージする意図があるのかもしれません。そう考えると、同人側にとってもあんまり能天気に喜べる状況では無いと思うのですが、二次創作を描く側にも「出来ればワンフェス等でのガレージキット販売の様に著作権者の認可を得たい」という考えが根強くあるので、そういう人達にとっては吉報なんでしょうな。個人的にはガレージキットと同人誌を同列に論じる事自体に無理があると思うんですが。

 と、そんな話はさておき、タイトルにあるセーラームーン裏同人誌ですよ。
 裏同人誌と聞いておそらく大多数の人が思い浮かべるイメージは、「現著作権者の許可のない、非公式の流通に乗った、ポルノまがいのわいせつな自費出版物」というモノじゃないかと思いますが、この定義だと実はほぼ全部の同人誌が該当しちゃう訳です。まぁ、ここでは刑法175条を根拠に、おまわりさんに鉄製の輪っぱをかけられて、臭い飯を食わされる羽目になるような描写のあるような本、つまり男も女もペヤングと性器が無修正、もろ描きされているような本と規定しましょうか。
 現在では同人誌でも最低限の規制として、性器の露骨な描写だけは避けている訳ですが、わたくしがかつて勤めていた某おたく系ショップに中古として持ち込まれた本の中に、このセーラームーン裏同人誌、つまり局部に修正のかかっていない本があったのですよ。

 古手のおたく諸兄の中には「セーラームーンの同人誌に無修正なんかあるのか?」と怪訝に思う方もおられれるでしょう。そうです、セーラームーンのTV放映は1992年からですから、普通で考えればセラムンの無修正の同人誌は無い筈なのです。
 ここでコミケの見本誌チェックの話をしましょう。現在では当たり前の事として大多数の人が気にも留めていないと思いますが、以前はこの様な内容チェックはやっていなかったのです(見本誌提出自体は存在したと思う)。
 ただ、1990年から91年にかけて漫画における露骨な性描写に対する世論(と、言うことにしておきましょうか)の批判が高まり、その流れで何人もの漫画家が同人誌における局部の無修正描写を理由に逮捕されたのです(その時に政権党内で『ポルノコミック』批判、取り締まりを主導していた人の中に居たのが、かの麻生太郎氏であります。まぁ、これは余談)。
 それまではコミケでは売られている同人誌の内容にまでは踏み込んでチェックしていなかった事もあってか、同人誌における局部描写は無修正だったのですが(もちろん当時だって法的にはやばかった筈なのだが、何故か不思議な事にそれでオーケーという暗黙のコンセンサスが存在した)、この事件をきっかけに91年の夏コミから見本誌のチェックを厳密にやるようになり、それ以降(これも厳密に言うと91年の春のコミックレヴォリューション以降と言った方がいいかもしれない)の同人誌では基本的には性器の無修正描写は無い筈なのです。
 ちなみに前述の理由から90年以前の18禁同人誌は買い取りしてくれない中古ショップもあります(○-BOOKSなんかそうですね)。まぁ、確かにこの時期の18禁同人誌は基本的に全て『裏本』になってしまうので、出来るだけリーガルに、リスクを減らして商売をしようとすれば正しい判断な訳です。

 その、無い筈のセーラームーンの無修正同人誌が買い取りで出てきたので、へぇ〜と非常に興味深く見ていた記憶があります。
 前述の通り、同人誌即売会では売れないアイテムですから流通経路が気になりましたが、多分パソコン通信を介して売っていたんじゃないかと思います。というか、それ以外には具体的な頒布手段が思いつかない・・・ ひょっとしたらこっそりと通販で売っていたのかもしれませんが。
 こんな問題のアイテムを買い取るのかいなと思っていましたが、当時の同人誌買い取り窓口にいたお兄さんは買い取り自体はしてくれました。ただし、二束三文の買いたたき価格でしたが。
 買い取り価格に不満なお客さんは「これ、無修正ですよ!」と必死にアピールしておりましたが(当時、その店では90年以前の同人誌の買い取り価格は割と良かった)、買い取り担当者は無情にも「だって、これもの凄くヘタな絵じゃないですか。」と直球で返されておりました。

 そうです、この時持ち込まれたセラムン同人誌は「ものすごいヘタ」だったのです。説明をするのは難しいのですが、デッサンが全然なってない割に書き込みだけはもの凄い細かい、非常に泥臭い絵でした。なんというか、牧村みきの漫画をメチャクチャにしたようなと言うか(おそらくほとんどの人が分からない比喩だと思いますが、自分にはそれ以外の言葉が思い浮かばないのです。なお、牧村みきが分からないという人は個別にお知らせ下さい。多分、20年前くらいからのおたくな人は、名前はともかく絵は見ている可能性はあります。)。
 ハッキリ言ってとても『ヌケる』というか『実用』になる代物ではありませんでした。それでもこの本を買った人にとっては『無修正』というのはありがたい代物だったんだろうなぁ・・・ あんたは自家発電おぼえたての中学生かと言いたくなりましたが、売り飛ばしに来たくらいだから、まぁ、「つかまされた」という認識はあったのでしょう。

 今ではインターネットを通じて無修正の画像なんか簡単に手に入れられますが、90年代前半の素人には大変な難題だった訳です。まぁ、今だって(日本人が描いた)アニメ絵の無修正はそう簡単には手に入れられませんが。
 今回は、そういう時代に前述の『セーラームーン裏同人誌』などという代物をつかまされてしまった人もいた、という今は昔のお話でありました。